当クリニックは猫の不妊去勢手術専門の会員制動物病院です。
にじのはしスペイクリニックのミッション

野外で暮らす猫たちを取り巻く問題
 
平成29年度、「猫を飼えなくなった」「野良猫の仔猫を見つけた」などの理由で全国の保健所等の行政施設に持ち込まれた猫の数を知っていますか?
 
その数62,137匹。そのうちの半数以上は飼い主がいない猫(いわゆる野良猫)が産んだ仔猫たちでした。
行政職員やボランティアさんは持ち込まれた猫の譲渡先をさがしますが、持ち込まれる仔猫の数が圧倒的に多く、加えて猫たちの中には、人に馴れない、離乳していない、病気にかかっている猫たちもいて、譲渡先が見つからない場合は行政施設で殺処分されます。
平成29年度、殺処分となった猫の数は34,854匹。その多くは、仔猫たちです。また、路上では、毎日たくさんの猫たちが交通事故に遭い亡くなっています(ロードキル)。その数は、殺処分数をはるかに超えています。
 
なぜ、このように行政施設に持ち込まれたり、路上で無残に亡くなる猫がたくさんいるのでしょう。
原因のひとつとして、猫の繁殖力と飼い方が挙げられます。
猫は繁殖力が強く、オスメスが一匹ずついれば、理論上一年後には30匹以上に増えるでしょう。
そして野外には飼い主がいない猫がたくさんいます。また、飼い猫であったとしても内外自由に飼われている猫もいます。もしも、その猫たちに不妊去勢手術がされていなければ…。猫たちが繁殖していくことは、容易に想像がつきます。
 
猫たちの繁殖によっておこる問題は、行政施設への猫の持ち込みやにとどまりません。
野外にいる猫たちは、テリトリーを持ち、えさ場、遊び場、トイレ、出産場所等と場所を決めて生活します。トイレと認識された場所では糞尿被害が起こり、出産場所では仔猫が生まれ、それぞれの場所の持ち主を悩ませています。また、猫による生活環境被害をめぐり、地域内で猫を好きな人と猫に被害を受けている人との間でトラブルが発生します。


猫の過剰繁殖によっておこる問題は身近にも…
 
このように、猫をめぐるさまざまな問題は各地で発生し、深刻なケースも少なくありません。また昨今では、屋内で飼い猫たちが過剰に繁殖し、飼い主の生活が破綻する「多頭飼育崩壊」事例も各地で発生しています。この場合、飼い主の生活はもとより、近隣住民への悪臭や衛生害虫の発生等の被害が起こり、飼い猫たちは餓死や不衛生な環境で飼育されたため疾病等にかかっていることも少なくありません。
 これらの問題に共通する原因は、猫を飼う人間の知識や責任感の不足による不適正な飼育・管理にほかなりません。しかし、その本当の原因は、適正な飼育・管理が何かを知る機会や適切な獣医療を受ける環境がなかったことかもしれません。


この問題に取り組んでいる人たちとともに
 
一方、この問題解決に取り組むボランティアさんは、野外で猫たちが繁殖しないように飼い主のいない猫たちに『TNR(捕獲Trapし、不妊去勢手術Neuterしたのち、元の場所に戻すRelease)活動』をしていますが、活動への社会の認知や理解は十分とは言えません。
また、動物愛護管理法を所管する自治体の保健所や動物愛護センターなどの行政には、飼い主不明の猫の持ち込みや猫による環境被害の苦情などが寄せられますが、それに対して行政ができる対応は、猫の飼い主やえさやりさんへ「排泄物の処理」や「不妊去勢手術」を促す飼い主指導と、住民が持ち込んだ猫の引き取りです。それは、行政が所管する動物愛護管理法に「行政が猫の不妊去勢手術を行うこと」と記載されておらず、行政が取り組むにはハードルが高いからです。
しかし、野外の猫によっておこる諸問題を解決する方法は、猫の繁殖を止める不妊去勢手術であり、それぞれの地域で猫の不妊去勢手術がもっともっと普及すれば、この問題は解決に近づくはずです。
 
 
MISSION
 
そこでわたしたちは、この問題に取り組む方たちを対象として、飼い主のいない猫の不妊去勢手術専門病院(スペイクリニック)を開院し、猫の不妊去勢手術を普及させることで「野外に生まれ過酷な環境で生きなければならない猫や、行政施設に持ち込まれる猫」と「猫による生活環境被害」を減らし、「猫がしあわせに、人が穏やかに暮らせる社会」の実現を目指したいと考えています。

「にじのはしスペイクリニック」に込めた願い

私は行政獣医師としての11年間で、飼い主不明の犬猫や余りにも身勝手な理由で飼育放棄された犬猫たちと接してきました。本来なら人間が守らなければならない小さな命のはずなのに、人間によって粗末に扱われている現実を何度も何度も目の当たりにしてきました。
「引っ越しをするから手放したい」「野良猫にえさをやっていたら増えた」…理解しがたい理由を平気で口にし、保健所に猫を持ち込もうとする人間たちに、何度も声を荒げました。そんな人間たちによって粗末に扱われたり、愛情をもらえず簡単に放棄されたりするたくさんの命に接し、あまりの不憫さに何度も涙しました。
そして、人間に放棄されたり野良猫だといわれ疎まれるかれらを、麻酔薬の過剰投与により安楽死させることも行政獣医師としての私の役目でした。そんな私の心の内にあったのは、安楽死させなければならないのならば、命の最期に立ち会う人間として、せめて最期の瞬間だけは愛情をもって接し、できるだけ苦しめずに彼らを「虹の橋」へ送ってあげようという想いだけでした。
 生きている間、だれからも愛情をもらえなかったであろうかれらを見るたび、人間たちに対し強い憤りを感じ、人間が果たすべき責任をもっともっと社会に広めたい、彼らのような動物を減らしたい…そう思ってこれまで過ごしてきました。
 
 「虹の橋」は、最愛の家族を喪ったペットロスの方に向けた作者不明の詞であり、天国の少し手前にあるとされている場所です。その詞の中には「生きている間、だれにも愛されなかった動物たち」が“虹の橋のたもと”で「生きている間だれにも愛されなかった人間」と出会い、ようやく幸せになれる、というくだりがあります。私は殺処分しなければならないときにはいつもこの詞を思い、虹の橋のたもとに行けば彼らはきっと幸せになれる、そう思いながら彼らの最期に手を下してきました。
だからこそ私は、だれにも愛されず亡くなる動物を減らすことができるように、この病院がその役目を果たせるように、と願いを込めてこの名前を付けたのです。また、猫と人の懸け橋となれるようにという思いも込めています。
 私がこの病院を通して目指すのは、猫がしあわせに、そして人がおだやかに暮らせる社会の実現です。